11 「現代フランス流ボルドーワインの格付け」
ワイン版ミシュラン2001?

ボルドーワインの現代風格付けは、ワイン愛好家にとって永遠のテーマです。
有名なメドック地区の公式格付けは、1855年ナポレオン3世の古い時代のものです。 高価格なワインが多いポムロール地区では、未だかつて格付けされたことすらありません。 サンテミリオン地区の公式格付けは更新されています。しかし、突然シンデレラワインが誕生し、世界的に値段が高騰して格付け外で1本15万円(CHヴァランドローなど)となったり
して、ワインの真の評価は常に話題になります。
近年アメリカのジャーナリスト達は、100点満点の点数をつけ、シャトーやワインの格付けを独自にしています。
日本でもマニアの間では有名になった、弁護士のロバート・パーカーや、専門誌ワイン・スペクテイターのポイントです。この単純でわかりやすい評価は、アメリカを始めとした世界のワイン愛好家達のワイン指標として
受け入れられ、彼らの出版物は爆発的な売上となり、今日の世界的ワインブームの基礎を築きました。
ただし、この評価はもちろんアメリカの流行に沿ったものですし、何よりもこの評価によってワインの値段が高騰する、といった投機的な悪影響を及ぼしました。ワインが投機家達による道具にされてしまったのです。
また、例えば87点と86点の差はどこにあるのか?などを考えると絶対値が細かすぎる問題があるようにも思えます。 今でもパーカーの本や、ワインスペクテイターの特集で100点満点が出たり、1位になったワイナリーのワインが発売翌日に全米で売り切れになり、しばらくすると数倍の価格になってしまいます。
CHラトゥール1990は、当初日本での販売価格が\15,000程度でしたが、ある時ワインスペクテイターで100点がつき、翌年にはワインブームも重なり、\100,000を超えてしまいました。カリフォルニア・ワインの価格高騰もこのジャーナリズムが大きく作用しているようです。
ところでフランスでもこのような独自の格付けが以前から行われています。アメリカよりもむしろ早く、80年代からソムリエ、醸造学者たちが集まって評価をし、専門書として出版されていました。
ただ、アメリカのようにマーケティングとして利用されることが少なかったために、ごく一部の専門家達のための手引きのようにして利用されていました。
今日ではフランスのワインジャーナリスト達も積極的に独自の方法で評価しています。 特に興味深いのがフランスで最も高名な専門誌レヴュー・ド・ヴァン・ド・フランス"Revue du Vin de France"が年1回発行する「クラスメント」という緑の本です。ちょうどミシュランのレストランガイドと同じサイズなのもおそらく意識的なことでしょう。 フランス国内全ての産地から有名ワイナリーが格付けされています。
そのワイナリー格付けの仕方もミシュランに倣って、最高が3つ星★★★(フランス中で31しかありません)、続いて2つ星★★(日本で1万円以上するほとんどのワイナリーがここに入ります)、1つ星★(大体日本で\5,000以上のクラス)星無しの4ランクです。 ミ
シュランと同じように星が無くても紹介されているだけで高級品として認められることになります。 また、各生産家それぞれの個別ワインについての評価が5つのワイングラスによって5段階評価されています。
アメリカの格付けと違うのは、ここで素晴らしい評価をされようと、落とされようとあまり市場価格に反映されないところです。
発表する側としては反応の鈍さが残念なことかもしれませんが、却ってその分思い切った評価がされているように思えます。
つい先日その最新版 "Le Classement 2001"を入手しました。今年は3つ星★★★(フランス中で31)の中、ボルドーが12を占めています。このことはボルドーワインの全体の質と量を考えても自然なことでしょう。
特筆すべきは、いわゆる伝統的に特別視されるシャトーのほとんどが入っている「3つ星★★★」にペトリュスだけが除外されていることです。
パーカが100点満点を続出させている常にCHマルゴーの倍以上で取り引きされるこのシャトーを「2つ星★★」にさせることは、おそらくパリの伝統的レストラン、トゥールダルジャンがミシュランの2つ星★★にされることと同様のフランス的厳格さが現れていると思います。
その注目すべきコメントは以下の通りです。
「ペトリュスは長い間たったひとつではないけれども、神格化されたワインである。(中略)ただし私たちとしては、厳しく評価しなければならないことがある。 1978年から 1986年にかけて、世間で極度に賞賛されていることに比べるとワインとしての調和が欠けている、ということだ。それが偉大な 1982年や1986年においてでも同様である。(後略)」 かくして大胆にも、「2つ星★★」に格付けされてしまったのでした。
ちなみに、アメリカで「シンデレラワイン」と呼ばれて価格が高騰したワインに対する評価はおしなべて厳しく、CHルパンやCHヴァランドローなど「1つ星★」(およそ日本で\5,000〜\10,000クラス)格付けとなっています。この部分はフランス人のアメリカ風流行に対するアンチ・テーゼのようにも感じられます。
逆に、スーパーセカンドのグループと甘口ソーテルヌから
CHコス・デス・トゥルネル(サンテステフ)
CHレオヴィル・ラス・カズ(サン・ジュリアン)
CHクリマン(バルザック)
が最高の「3つ星★★★」にランクされていること。
そして「2つ星★★」にブルジョア級の
CHソシアンドマレ(オーメドック)がランクされ、
「1つ星★」にもいくつか優秀なブルジョア級シャトーがランクインされていることなど、興味の尽きない内容になっています。
フランスで最も高名な専門誌レヴュー・ド・ヴァン・ド・フランス"Revue du Vin de France"