
その7 「眠れる森のワイン姫」(問題篇)毎回、日本の昔話ばかりでは、つまらないので、今回はちょっと趣向を変えて(というより、ネタ切れで)、海の向こうのお話です。
ヨーロッパで雛祭りを祝うとは思えませんが、そこは童話の強引さ、宮殿で盛大なパーティーを開いてお祝いすることになりました。 パーティーの開会が宣言されると、最初に、星の魔女が王女の前に進み出ました。杖をかざすと、たちまち、宮殿の中が星で輝きました。次は木の魔女がうやうやしく王女の前に現われました。樫の葉を一枚投げると、宮殿の中が緑で溢れ、春の息吹が溢れました。水の魔女が大理石の床を手の平で撫でると、床が湖のように光できらきら輝きました。雪の魔女も進み出て息を吹きかけると、宮殿が雪におおわれたように白銀に包まれました。みんな、あまりの美しさにうっとりしています。 最後はワインの魔女です。王女の名前と誕生年にちなみ、1982年のシャトー・マルゴーを捧げ持ちました。1982年物は、1945年、1961年(*2)と並び、ボルドーでは20世紀最良のビンテージ。バーゲン・セールで買っても1本10万円はしそうです(*3)。本当は、少しもったいないと思いながら、ワインの魔女はエッフェル塔から飛び降りたつもりでセラーから持ってきたのです。 「王女様の誕生年のマルゴーでございます」 ワガママいっぱいに育った王女は、我慢ということを知りません。 ワインの魔女は、仕方なくラギオールのソムリエ・ナイフ田崎真也モデルを出すと、1982年のマルゴーを開けました。最初の1杯をリーデルのボルドー・グラスに注ぐと、王女に差し出しました。王女は、グラスを鷲づかみすると、喉を鳴らして一気飲みしました(*7)。 ワインの魔女はびっくりしました。 王女が最後の一滴を飲み干すと、大きなゲップを出しながら言いました。 ワインの魔女は、むっとして言い返しました。 「何言ってんの、今、美味しくなきゃダメでしょ。こんな渋いのは料理に使うのがお似合いよ。今、厨房でコック・オー・ヴァン(*9)を煮込んでいるはずだから、その鍋に入れておしまい」
マルゴー1982年が料理酒!? それを聞いたワインの魔女は、プッツンとキレてしまいました。恐ろしい顔で呪文を唱え始め、最後に、「マルゴーが目覚めぬ限り、姫も目覚めぬ」と言った瞬間、王女に呪いがかかり、床にくずおれて深い眠りに落ちてしまったのです。 「ありがたく、いただいておくよ」 ワインの魔女は、王様に巻物を3巻渡しながら言いました。
6歳の子供から80歳のじいさんまで、100人ほどの男が集まりました。でも、みんな、なぜ集められたかよく判りません。 どうも、男どもは、王女よりワインの方に関心があるようです。 時間が来て、解答用紙を回収すると、直ちに採点が始まりました。 150年前の格付は、今の品質とは全然違うので、覚えていても仕方ないということでしょうか、100人いた男が一挙に20人に減りました。魔女が言いました。 「では、第2問じゃ」 「ここに10本のワインを置いた。さっきと同じ要領で、このワインを小さい順に並べ替えよ。ただし、何の順番かは各自がよく考えよ」 先ほどと同じように、大臣が布を取ると、次のような10本のワインが並んでいました。 Iイグレック (*19)
難問だったであろうが、答えを聞いたら、なるほどと思うだろう? それぞれのワイン
@サンジョセフ (1988年物だが、生産者不明) |
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今回の特別な1本
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| (*1):美貌の映画俳優、マーゴ・ヘミングウェイは、祖父の文豪ヘミングウェイがシャ トー・マルゴーが好きで名付けたらしい。日本のマルゴー・ファンは、娘に「丸 子」と名前をつけるんだろうか? (*2):当たり年は、豊作なので、量が多いのが普通だけど、1961年物は、霜にやられ、 (*3):1982年物は、高価だけど、量はあるので、1961年に比べると、探すのは簡単。 (*4):これを、専門用語で「旅の疲れ」と呼ぶ。揺すったほうが美味かったという実験 (*5):ドイツで一番多く作っている白。少し冷やして飲むと美味い。ワイン通は飲むべ (*6):黒猫の乗った樽のワインが美味かったという故事が有名な白。大袈裟な由来話の (*7):高級ワインをタダで飲ませてもらうときは、1分に1ミリずつ飲み、そのたびに (*8):温度の低いセラーに入れておくと、熟成は更に遅くなる。生きてるうちに飲みた (*9):ブルゴーニュ地方の名物料理。ブツ切りにした鶏と野菜を赤ワインで煮込む。と (*10):これにひれ伏さない人はない、ブルゴーニュの伝説的なワイン。 (*11):出荷直前にデゴルジュマン(澱抜き)をしたボランジェ社の看板的シャンパン。熟 (*12):サンジュリアン村の有名シャトー。「ワインの東京23区」と言われるメドック地 (*13):1級格付けの中で、一番虐げられている、可哀相なワイン。でも、1級の中では (*14):「ワインの東京23区」といわれるメドック地方の中で、「港区」と呼ばれている (*15):「港区」と呼ばれるポ−イヤック村で女王格がこれ。柔らかい味わいが身上。 (*16):ラベルにハートが印刷してあるので、欧米ではバレンタイン・デーの必須アイテ (*17):ソムリエやワイン・アドバイザーの資格取得の勉強で、最初に暗記させられるの (*18):元弁護士のアメリカ人、パーカーがワインごとに100点満点でつける点数。これ (*19):デザート・ワインの最高峰、シャトー・ディケムが作った辛口の白。珍しいので、 (*20):ブルゴーニュで最も男性的なワインを産する村。ファンが多い。プロは、短く (*21):ローヌのワイン。色が黒に近く、濃厚な赤。夏に飲むと、毛穴からタールが出る。 (*22):ご存知、ブルゴーニュが誇る世界最高峰の赤。 (*23):かなりマニアックなシャンパン。 (*24):ボージョレの中で、最も濃厚なワインを作る村。20年寝かせると、ブルゴーニュ (*25):カリフォルニアの「港区」。サンフランシスコ空港から1時間少しで行ける。 (*26):パーカーが誉めて超有名(超高価?)になったシンデレラ的カリフォルニア・ワイ (*27):ブルゴーニュの特級畑。貧乏人が買えるブルゴーニュの特級は、これとエシェゾ (*28):スペインの名門生産者。20年物が数千円で買えるのがエラい。 (*29):上記の(*10)と同様、これにひれ伏さない人はない、ブルゴーニュの伝説的な白 |
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作者 葉山 考太郎(はやま こうたろう)
湘南地区在住といわれる謎のワインライター。 |