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その8 「眠れる森のワイン姫」(解答篇)

問題篇はこちらから

「ここに10本のワインを置いた。このワインを別の法則に従って小さい順に並べ替えよ。ただし、何の順番かは各自がよく考えよ」
 @サンジョセフ (1988年物だが、生産者不明)
 Aクロドラロッシュ   (ルロワの1990年)
 Bシャンベルタン (生産者、生産年不明。コルクがボロボロで目減りがひどい)
 Cナパ         (生産者、生産年とも不明の赤ワイン)
 Dムーランアバン    (ジョルジュ・デュ・ビュッフの1989年)
 Eニュイサンジョルジュ (アンリ・グージュの1985年)
 Fハーランエステイト (1991年。保存は完璧)
 Gゴッセ (通常のノンビン)
 Hトーレス (グラン・コロナスらしい)
 Iイグレック (1995年)

  別の並べ方? そんなのあるのかよ? 5人の顔から笑みが消えました。時間はどんどん過ぎていきます。あっという間に時間終了のベルが鳴り、解答用紙が集められました。


「フフフ、では、正解を発表する。正解は、次の通りじゃ。

 Bシャンベルタン
 Cナパ
 Gゴッセ
 Hトーレス
 Iイグレック
 @サンジョセフ
 Dムーランアバン
 Aクロドラロッシュ
 Fハーランエステイト
 Eニュイサンジョルジュ

 ワインの文字数の少ない順番に並んでいるのだ。第1問では、例えば、カロン・セギュールみたいに、『・』で単語を繋いであったが、第2、第3問ではそれがないというのがヒントなのじゃ。
何? シャンベルタンは7文字なのに、なぜ、最初に来るかだと? 良いところに気が付いた。そう、それが、第3問のカギでの、このシャンベルタンは、コルクがボロボロで目減りが激しい。したがって、中身はワインではなく、『酢』、すなわち、1文字という訳じゃ。フォッフォッフォッフォッ

 ワインの魔女は、バルタン星人笑いをすると、採点していた大臣の方を向きました。正解者がいたのでしょう、大臣の顔は喜びに輝いています。

一人だけ正解だ。でかしたぞ!

 そう言うと、ル・パン1982年をその若者に与えました。みんな、羨ましそうに見ています。
 大臣は、正解した若者の手を取ると、眠っている王女のところへ連れて行きました。王様もベッドの隣で心配そうに見ています。

さあ、願い事を口にして、王女にキスをしてくれ

 若者は、安らかな王女の寝顔を見ると言いました。

王女の目を開けて下さい

 若者は、王女にキスをしました。その瞬間、王女が、パッチリと両目を開たのです。王様も大臣は大喜びです。

でかしたぞ。褒美に余の領地を与える

 そのうち、おかしなことに気付きました。王女が起き上がる気配がないのです。それどころか、王女は、目を開けたまま、スヤスヤ眠っているのです。鼻をぼりぼり掻くと、いびきをかき始めました。目を大きく開けてゴーゴーいびきをかく様子は、とても不気味です。その上、時々、ニタリと思い出し笑いをするので、何とも恐ろしい情景です。それを見たワインの魔女は、ヘラヘラヘラと楽しそうに笑いました。

残念だったねぇ。『目を覚ませ』ってお願いすればよかったのにねぇ。
『目を開けろ』じゃあ、目を開けたまま眠るだけだ

 魔法使いは意地悪そうにそう言いました。どうやら、ワインの魔女は、初めから呪いを解く気はなかったようです。ですから、「目を覚ませ」とお願いしても、目を覚ますだけで、体は起き上がれないに違いありません。そのときでした。音もなく、星の魔女、水の魔女、木の魔女、雪の魔女が現われました。
 雪の魔女が一歩前に進み出て、王様に言いました。

王様、領土を全部くれたら、王女様の目を覚まさせてご覧に入れます。雪が解けるみたいに呪いを解いてみせます

 雪の魔女を押しのけて、水の魔女が言いました。

王様、領土を半分くれたら、私が王女を元に戻します。『水泡に帰す』という感じで

 水の魔女を突き飛ばすと、木の魔女が王様に言いました。

王様、領土を4分の1くれたら、私が元に戻してあげましょう。私は、木の精なので、全てを『気のせい』にして、なかったことにしますよ

 あまりの寒いギャグに国中が瞬時に凍りついてしまい、全員が冬眠に入ってしまったということです。

めでたくない、めでたくない。
                                    了

 

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作者 葉山 考太郎(はやま こうたろう)

湘南地区在住といわれる謎のワインライター。
コスプレとタダ酒を異常に好み、タダ酒の飲める場所に突然出没できる恐るべき
臭覚を持つ、といわれている。
BRUTUS、ヴィノテーク等執筆多数。
主な著書に「ワイン道」、「辛口/軽口 ワイン辞典」、「シャンパンの教え」
(全て日経BP社)