コート・デュ・ローヌの宝石
ミシェル・シャプティエ ワインセミナー報告 (若干の補足付)
2000年6月5日VINEXPO東京を前日に控え、ホテル・インターコンチネンタル東京ベイにて、ミシェル・シャプティエによるワインセミナーが開催されました。
ミシェル・シャプティエは兄のマークと共に1989年に父親からシャプティエ家を任せられるようになりました。以来、彼の兄マークが経営全般を、弟のミシェルが醸造の責任者として素晴らしい発展を遂げ、10年間でシャプティエ・ワインをローヌだけでなく世界を代表する最高品質のワインとして知られるようになりました。そして、ローヌワインを世界中に広める役割も果たしています。
昨年、僕がローヌのシャプティエ家を訪問したときは兄のマークが会ってくれましたが、残念なことに彼が病気になり休養を余儀なくされ、今年から全ての経営・醸造を弟のミシェルが一人で携わることになりました。
ワイン醸造の90%はぶどう樹の栽培
「良いワインを造ることは良いぶどう樹を育てることが大事です。それがほとんどと言っても良いくらいで、それがあって良い醸造が出来るのです。醸造で人間の手の加えられることは、ほんの少しです。」彼はとても謙虚にこう述べました。 補足すれば実際には素晴らしい土壌を生かすも殺すも生産者次第ですし、ぶどう樹の育成も、生産者のたゆまぬ努力が必要です。大事なことはどれだけ土壌とぶどうのポテンシャルを最大限に引き出す力が栽培者側にあるか、と言うことです。シャプティエはそのことを充分に知ってそれを実践する造り手です。
なぜ有機栽培のバイオダイナミックか?(化学肥料が及ぼす悪影響について)
「 しかし、そのことにより今まで保たれていた生態系が破壊され、思わぬ弊害を生むことになりました。 化学肥料は作物だけでなく、そこにある全ての植物や菌類の発育も促すために、それまでに存在しなかった病気(カビ菌などによる)が生まれることになりました。」
「 そして今度はその病気を防ぐために化学農薬が使われます。すると有能な微生物までを殺すことになりました。また、病気の元となるカビ菌も大量発生するとぶどうに病気をもたらしますが、少量の微生物が地中にある場合は土壌のミネラル分の生成にとても重要な役割を果たします。化学農薬がこの働きも殺してしまう結果になってしまったのです。」
「 この微生物が殺されることにより、ぶどう樹は栄養不足となり、より多くの化学肥料を必要とすることになります。化学肥料は地中の浅いところに広まり、ぶどう樹は根を深く張ることを怠るようになります。この悪循環がテロワールの個性を破壊し、その個性を根から得ようとするぶどうの個性も破壊されてしまうのです。」有機栽培については今まで精神的な非論理的な根拠の今ひとつはっきりしない説明が多かったのですが、彼の説明はとても論理的でした。
テロワールがどのようにワインに反映されるか
収量制限
「ぶどう畑の土壌は上部の粘土質の部分とその下の鉱物質の岩盤の貧しい土壌の層に別れています。この下側の土壌がワインの個性のためにとても重要です。そのために根をとても地中に深く下に張っていけるようにしなければなりません。」
ぶどうの根を深く下に向かわせるためには、高密度で栽培させることが必要です。1mごとに木を植えることによって1ha当たり10,000本の木を植えることが出来ます。密集したぶどうの根は横に広がることが出来ずに下へ進むことになります。
またこの畑を定期的に耕すことにより、少しだけ横に広がった根を切ることが出来ます。」
このように密植したぶどう樹からは1本当たり5房程度しか実が付きません。このことにより、超低収量で非常に凝縮した果実が収穫されることになるのです。
フランスで素晴らしいワインを造る、ということはこのようにして土壌とぶどうのことを良く知ることなのです。
土壌の反映
「この凝縮した果実は結果的に土壌の性質、ミネラルの成分を良く反映したものになります。ところが、例えばコートロティとエルミタージュでは同じシラー種のぶどうが植えられていますが、これは生のまま食べてもほとんど味の差はありません。
それが、ぶどうが発酵することにより大きく変貌するのです。このことは、地中の微生物が花崗岩や他の物質との作用で発生するミネラル分の成分によって様々な野生酵母が発酵の際に活動することに由来します。このことにより出来上がったワインはコートロティはその畑の野生酵母によりコートロティらしく、エルミタージュもエルミタージュの野生酵母によりエルミタージュらしくなるのです。
その理由からシャプティエでは培養酵母を添加することは一切していません。」
ワインの味わい
「シャプティエのワインはその土地の持つ微妙な複雑味を反映させようとして造られています。誰にでも無条件で楽しめる単純なワインではありません。また、料理との相性も考えて主張が強すぎるような造りはしていません。
ですからこれらのワインは本当の楽しみを得るために、一生懸命飲み手の側からアプローチをする必要があるワインだと考えています。飲み手の経験と教養とセンスが必要ですが、こちら側がその魅力を探し出す努力をすれば様々な複雑味と洗練性が出てきて、期待に答えてくれるワインだと確信しています。
料理との相性もシャプティエの考えるとても重要な要素です。現在は多くのワインメーカーがこの料理のことを無視したワイン造りをしているようです。しかし、ワインは必ず料理と合わせて楽しむべきものです。
そのために、ワインは単独で主張をしすぎない、優雅でお淑やかな造りを目指しています。
この控えめな淑やかさが料理と調和することによって最大限の魅力を引き出すことになるのです。ぜひ美味しい料理と一緒に楽しんで下さい。」
彼の熱心な講義の後でいよいよテイスティングに入りました。その際に彼は面白い技を教えてくれました。
「試飲が終わり空になったグラスには、わずかにワインが残っています。このグラスを良く振ることによってワインを最大限に空気に触れさせることが出来ます。若いワインの場合、このことによって熟成したときの趣を探ることが出来る、その可能性を探ることが出来ます。」というものでした。ぜひ試してみましょう!
シャプティエ・ワインテイスティング
シャプティエの限定醸造品はこちらをクリックください
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エルミタージュ赤 "ラ・シゼランヌ"
AOC Hermitage M・シャプティエ シャプティエのお膝元エルミタージュのスタンダードワインです。花崗岩質を中心にした3つの土壌からブレンドされています。急斜面に植えられています。 深いガーネット色、甘草とカシスのスパイシーでフルーティーな香りが特徴です。インクやパンの焼けたような凝縮した香もあります。 手摘みで収穫され、樽で1年間寝かされます。(1/3新樽) |
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バニュルス 甘口赤 AOC
BanyulsM・シャプティエ
名手シャプティエはこの産地よりやや北東のローヌ地方の造り手ですが、このバニュルスに関しては特別に造詣が深く、手頃で大変にバランスの良い味わいに仕上げることに成功し、このワインが今日のバニュルスの定番的な存在に認められています。
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